Tropical Night 〜1〜

「ユウキー、ちょっと来いよー。」

リビングでテレビを見ていると、仕事部屋から僕を大声で呼ぶ声がした。

「なにー?今いいところなんだけど。」
「いいから来いよ。」
「んー・・・ちょっとまってー。」

僕は毎週土曜の夜の韓国ドラマを楽しみにしてるんだ。おばちゃまたちの気持ちがよくわかる。カッコイイ!いいよなぁ。こんな男になりたよなぁ。

「こっちこいよ!」

もうっ!なんだよ。うるさいな。真剣にテレビ見てるのに!土曜の夜だっていうのに仕事部屋(と勝手に僕が呼んでいるだけだけど)に閉じこもってるから、おとなしくテレビを見てるんじゃないか。僕は自分がTVに夢中だったことは棚に上げ、ちょっとむくれて仕事部屋に向かった。仕事部屋は寝室の向かいにある。

「なによ?僕も忙しいんだけど?」
「なに怒ってるんだよ。なあ、グアム行かない?」
「は?」
「2泊3日だけど。金曜の夜出て、日曜の夜帰ってくれば学校やすまなくて済むだろ?」
「それって・・・なんで急に?」
「公休消化しなきゃならないのと、藤本に誘われてさ。」
「藤本さんに!?」
「ああ、一緒に行かないかって。行くだろ?」
「3人で?」
「4人で。藤本の彼氏と。」
「彼氏?藤本さんって彼いたの?」
「え?言わなかったっけ?一緒に住んで3年ぐらいじゃないか?長いんだよな、奴ら。」

知らなかった。青山さんと関係があるんじゃないかって、ずっとやきもち焼いてた。でも、じゃあなんであんなことを?青山さんも知ってて3人でしたってことだよね?んー・・・・

「なに考えてるんだよ?」
「いや、別に・・・・・」
「なあ、行くだろ?」
「え?どこに?」
「・・・・・グアムだよ!言っただろ?聞いてなかったか?」
「ああ、そうだったね。グアムね。うん・・・グアム!?って外国じゃん!」
「外国って・・・・まあ、アメリカだけど。でも3時間だよ?」
「外国行ったことないし・・・・・」
「そうなの?今時修学旅行は海外だって聞くけど。」
「あー、私立はね。うちの学校は今年も京都だったって先輩が言ってた。」
「ふーん、そうなんだ。珍しいな。」

どうしよう・・・・外国なんて行ったことないし、英語もしゃべれない。お金もないし。パスポートなんて持ってないし・・・・事件とか巻き込まれたりして。撃たれたりしたら・・・

「お前さ、また変なこと考えてるだろ?」
「変なことって?」
「まあいいや。ちょっと座れよ。」

彼は椅子の奥に座り、足を広げて前方部分をあけた。革張りの黒いリクライニングシート。テレビで見た社長の椅子のようだ。僕は彼の足の間に座った。彼は椅子を机に寄せ、パソコンに向かった。画面には旅行会社のサイトが映っている。

「どのホテルがいい?」
「僕よくわからないし・・・どこでも。」
「お前も見てみろよ。俺はアウトリガーかハイアットが良いと思うけど、DFSの前だし。」
「あの・・・僕パスポート持ってないし・・・お金もないし・・・英語も・・・」
「あのなぁ。金のことなんて心配するな。高校生のお前が金持ってたら逆にヤバイだろ?」
「そうだけど・・・でも・・・」
「俺はお前に金出させるつもりはないよ。日本にいようが海外に行こうが。」
「でもそれって・・・」
「そんなこと言わせるなよ。お前が就職したら割り勘にすれば良いだろ?」

僕が就職するのって、かなり先じゃないか。大学にいくかわからないけど、行かなくても2年以上先のことだ。それまで青山さんの世話になるのか?最近は土日だけでなく、ときどき平日もこの部屋に泊まるようになった。外食することが多いが、食費や雑費にと、彼がまとまったお金を渡してくれるようになった。もちろん、1円だって無駄なことには使っていない。わずかな自分のお金ともキッチリ分けている。

「ゆうき、俺が一緒に行きたいんだよ。それとも独りで行かす気か?藤本たちと一緒に。」
「それは・・・」
「それって俺スゴイ惨めだぞ。」
「・・・・・ありがとう、行くよ。連れてってくれる?」
「だから言ってるだろ?俺が一緒に行きたいって。」
「パスポートないけど。」
「そうか・・・戸籍と住民票だけ取っとけよ。あとは一緒に手続きに行ってやる。」
「うん・・・ありがと。」
「で、ホテルどこにする?ほら、お前見てみろよ。」
「う・・ん・・・」

僕は未だにパソコンが苦手なんだ。以前に彼に教わったけど、未だによくわからない。このマウスってヤツの右と左を押す違いもよくわからないし。ほら!変なの出てきた。これって消えないの?

「貸してみろよ。」

彼が僕の手を覆うようにマウスを握り、すばやく操作する。

「いいか、もうツアー名が出てるから、詳細を見たいところにカーソルを持ってきて、あ、この矢印のことな。
 それで、左側をクリック・・・押すんだよ。すると・・・ほら、開くだろ?」
「ほんとだ!すごいよねぇ。一瞬だねぇ。」
「お前ってほんとに・・・・・家にパソコンないんだっけ?」
「うん・・・・兄貴は持ってるけど、僕の部屋にはテレビもないよ。」

両親と仲の悪い僕は、何かを買ってもらった記憶がない。出来のいい兄貴には何でも買い与え、出来の悪い弟には見向きもしない。別に気にしてない。こんなことはどこにでもある話だ。小さい頃からそうだった。だから僕も小さい頃から何かをねだったこともない。

「じゃあさ、エッチなサイトとかも見たことない?」

人がしんみりしてるときにこのオヤジは!!でもこういうところがいいのかも。暗くならないし。この人と一緒いると、すごく嬉しいときか笑い過ぎて泣くぐらいしか涙を出さないもの。

「あのさー、僕まだ高校生だよ?」
「関係ないだろ。前にさ、俺の知り合いで、中学生に掘られたって話聞いたことあるよ。」
「掘られたって・・・・中学生に?」
「そう。ことの最中にはわからなくて、終わってから聞いたら14歳って。」
「えーうそだよ。そんなの。中学生が青山さんぐらいの年代の人を・・・」
「まあ、信じがたいよな。でも学生証見たってよ。ほら、これ見てみろよ。」

いつの間にかディスプレイに裸の女性が映ってた。性器もはっきり映ってる。女性のってこんな風になってたんだ。初めて見た。それよりも、男性のペニスに目が釘付けだ。外人って、こんなにすごいんだ。女の人ってすごいな。こんなに大きいのが簡単に入っちゃうんだ。

じっと画面を見ていると、彼の左手が僕の股間に落ちてきた。

「どう?興奮する?ちょっと勃って来たかな?」
「うん・・・すごく、大きいね。」
「なに?ああ男のほう見てるのか?」
「ん・・・すごい太い・・・ねえ、男同士でもこれが入るんだよね?」
「そっか、そっちのがいいのか。」

左手を僕の股間を揉みながら、右手に重ねられた彼の手は、マウスを動かした。すると、男性の裸が画面に現れた。なにやらパスワードのようなものを打ち込むと、画面がまた変わり、まさに男性同士の行為そのままの画像が現れた。

「どれ見る?」

僕は瞬きも出来ず、声も出せず、じっと食い入るように画面を見た。彼はそのうちのひとつをクリックすると、画面上にビデオが流れ出した。外人二人がソファの上で激しいキスをしている。互いの股間を触りあい、ベルトを外し、Gパンを下げる。下着はつけてない。おそらく半勃ちなのだろ。体に垂直に立ち上がったそれは、僕が完全に勃ちあがった時の倍ぐらいの大きさで、カリは張っていなく、日本人に比べると先が細い。

「まさか俺のと比べてないだろうな。」

首筋にキスをしながら耳元で囁かれ、ハッと我に帰る。僕の右手から離れた彼の右手は、Tシャツの下にもぐりこみ、乳首を摘んでいる。

「・・・あっ・・・比べて・・・・なんて・・・」

だけど、本当は少し思ってた。青山さんのも大きいと思っていたけど、外人のはもっと大きいんだ。こんなのが入ったら腸が破れそうだ。彼が日本人でよかった。

短パンの上にあった彼の手は、いつの間にか中に入り、直接僕のペニスを掴んでいる。画面上は、全裸になった外人が、互いにペニスをしゃぶりあっている。

「白人はね、完全に勃ってもあまり硬くないんだよ。」
「そうなの?」

彼の右手が乳首から脇をつたって腰まで落ち、僕は短パンを膝までずり下ろされた。左手はペニスを扱き、右手はアナル付近を撫でる。中指の先が僕の中に入った。少しずつ押し込まれ、しばらくすると中指全体が埋め込まれた。中で僕の感じる部分を探して動く。

画面は変わり、ソファの上で四つんばいになった男性に、もう1人がペニスを当てている。アナル付近にペニスを擦り付けているが、確かに柔らかそうだ。手で押さえながら挿入しようとしている。次の瞬間画面が変わり、ペニスが激しく行き来する。

「コンドーム付けてる・・・」
「そうだな、こういうビデオでも最近多いよ。やっぱり病気が心配なんだろうな。」
「そうなの?・・・僕たちつけないよね?」
「付けてほしい?」
「・・・・ううん。僕はないほうがいい。そのほうが直接的な感じがするし。青山さんは?」
「俺はもちろんつけないほうがいいよ。男はみんなそうだろ?」
「そうなの?僕はつけたことないし、わからないよ。」
「そうか、お前女ともしたことないって言ってたっけ。」
「うん・・・ちょっと恥ずかしいね。」
「ばか。そんなこと・・・・・ちょっと待ってろ。」

僕の中から指を抜くと、彼は立ち上がった。おそらく寝室へローションでも取りに行ったのだろう。画面では入れられている男性が派手な声を上げている。こんなに大声を上げるものなのか?画面が変わり、相手の男の口に向かって自らのペニスを扱いている。相手の男は大きく口を開け、舌を出し受け止めようとしている。その舌にはピアスがついていた。僕は自分のペニスを扱きながら、画面を食い入るように見つめた。

「まだ達くのは早いぞ。」

戻ってきた彼は、机の上にローションとコンドームを置いた。

「それ・・・つけるの?」
「ああ。ユウキがね。」
「僕?なぜ・・・」
「何事も経験だろ?」

彼はGパンと下着を脱ぐと、ローションを手に取り、自身のペニスに塗った。そのままグチャグチャと何度か扱くと、すぐに屹立し天を仰ぐ。更にローションをペニス全体に塗りつけると、僕と椅子の間に割りこんだ。ローションに濡れた手で僕のアナルを撫で、指を入れる。

「あっ・・・んんっ・・・」

快感に身を捩りながらも画面からは目を離さない。画面の中では、男性が大声をあげて達していた。それを口の中に受け止め、舌でペニスを舐めながら、受け止めた男性も自分自身を扱き、床に大量の精子を飛ばしている。

しばらくするとビデオは止まった。彼はマウスを動かし、次のビデオを探しているようだ。その間も僕の中の指は動き続け、尻には彼のペニスが擦り付けられている。もう入れてほしい。僕はアナルに力を入れ、彼の指を吐き出し、尻に擦り付けられていたペニスを求めた。僕は中腰のまま彼が入ってくるのを心待ちにしている。早く入れてほしい。腰を落とそうとすると、彼がペニスをずらす。擦れる一瞬が快感を生み出す。何度も繰り返されると、膝が震え立っているのが辛くなる

次のビデオが始まった。ベッドの上に全裸で仰向けになった黒髪の男性。既に勃起している。金髪の男性がペニスをアナルに入れようとしている。

僕はもう待ちきれず、彼のペニスを押さえ腰を落とした。先端が僕の中に埋まる。彼が『うっ』と声を漏らす。僕のアナルも熱くなる。白人のと違い、カリの張った彼のペニスは僕のアナルを押し広げ、直腸を開きながら中へ中へと進んでいく。

ビデオの金髪男性も、黒髪男性の中にペニスを埋めていたが、まだ先のほうしか入っていない。だが、腰を動かし、黒髪男性は声を上げ始めた。今度のビデオはコンドームをつけていない。

「これは・・つけてない・・・」
「ん?ああ、そうだな。いろいろあるよ。」

彼は僕の腰を掴むと、ゆっくりと下に向かって誘導した。僕は少し下ろしてはまた腰を浮かし、それを何度も繰り返しながら、次第にアナルの奥深くに彼のペニスを飲み込んだ。完全に埋まると、机の上のコンドームを取り、僕に手渡した。

「開けてみろよ。」

僕は袋の端を切り、中からコンドームを取り出した。薄いピンク色のそれは、ゼリーでベタベタしている。

「教えてやるから、自分でつけてみよろよ。」
「うん・・・・」
「まずゴムの先を摘んで、空気が入らないようにちんちんの先に載せて・・・」
「こう?」
「そう、それで根元まで巻いてあるのを下ろす。」
「これを?・・・・あれ?・・・・できない・・・」
「全体的に満遍なく・・・・やってやるよ。手どけて。」

一箇所だけを下ろそうとしたため、周りがつっかえてしまった。彼がそれを戻しながら、ペニス全体を覆うようにコンドームをつけてくれた。窮屈な圧迫感がペニス全体に広がる。

「できた。どう?」
「うん・・・よくわからない。なんか・・・縛られてるみたいな。」
「動いてるうちに外れないようにできてるんだよ。動くからビデオ見てろよ。」

画面に目を向けると、金髪男性が激しく腰を振り、黒髪男性も自身のペニスを激しく扱き、大きな声であえいでいる。僕も自分のペニスを握り、上下に動かしてみた。だが、いつもよりも気持ちよくない。

「つけてるとよくないだろ?」
「うん・・・・直接触るよりも・・・・でも・・・お尻の中は・・・」
「気持ちいい?」
「すごくいい。」

僕は彼が動きやすいように腰を少しあげた。下から彼が腰を突き上げる。

画面の中では、黒髪男性が、そんなに激しく扱いたら痛いのではないかというぐらい強く激しくペニスを扱いている。また大声で何かを叫ぶと、金髪男性が動きを止めてペニスを抜いた。そのまま黒髪男性のペニスに舌をつける。すぐに黒髪男性が射精し、金髪男性が亀頭を口に含む。喉が動いているので飲み込んでいるのだとわかる。腹の上に落ちた精液も舌で舐め取る。そして、またペニスを口に含み、尿道に残った精液を吸い取っているようだ。

青山さんは僕の背中を押して僕を立ちあがらせると、机に手をつかせ腰を突き出させた。

「あっ・・・ぬいちゃ・・・やだ・・・」
「わかってるって。」

青山さんも立ちあがり、再度挿入して腰を打つ。腸の奥まで彼のペニスが入り込む。ビデオの男ほどではないが、僕も我慢できず声を漏らしてしまう。

「んっ・・・あっ・・・はぁっ・・・あーっ・・・・」

ビデオの金髪男性は、また黒髪男性の足を持ち上げて挿入し、あえぎ声と同じぐらい派手な音をさせて腰を打っている。画面には、クローズアップされた結合部分しか映っていない。アナル付近の細かい皺の一本一本まではっきりと見える。ときどきペニスを抜くと、ぽっかりと開いたアナルから真っ赤な腸壁が見える。もう恥ずかしくて見ていられない。顔を背けると、彼があごを持ち上げた。

「よく見ろよ・・・・おまえのここも同じなんだよ。」
「やぁっ・・・恥ずかし・・・いっ・・あぁっ・・・」

金髪男性の動きは徐々に早さを増し、ついに射精のときを迎えた。だが、ペニスを抜き、一度二度と黒髪男性のアナルに精液をかけると、また挿入し中で射精の続きをしているようだ。睾丸がピクピクと動いている。ペニスを抜くと、ぽっかり開いたアナルから、白い精液が流れた。金髪男性はそれをペニスで拭い取ると、またアナルへ挿入し、ゆっくり動きだした。

僕の中では彼のペニスが、いつもの僕の感じるところをピンポイント攻撃する。そこを攻められたらすぐに達っちゃうって言ってるのに、彼は意地悪くいつもそこをついてくる。僕のペニスは射精に向け少し膨張したのであろう。コンドームがますますきつく感じる。

「そこっ・・・あんっっ・・やめ・・・て・・あっ・・」
「なんでだよ?・・ここいいだろ?」
「だめ・・・・でちゃ・・あぁっ・・・」
「いいよだして。でるときちんちん見ててみな。」
「やっ・・・なんで・・あーっ・・はぁっ・・・」
「いいから。見ててみろよ。」

僕の腰に手を置き、彼の動きが速くなる。僕の後頭部を押して下を向かせた。僕は机の上に突っ伏し、自分の股間を見た。彼に突かれてプルプルと揺れている。ピンク色のコンドームがペニスをいつもより赤く見せ、なんだかエロい。

「あーっっ・・・だめぇっ・・・でちゃっ・・・あぁっ・・・」

コンドームをつけたペニスの先が白くなる。射精にあわせて白い部分が広がっていく。と同時に、先が少し下がり、吐き出した精液が、コンドームの中に溜まっていくのを感じた。

「どう?エロいだろ?」
「・・はぁ・・・・うん・・・・なんだか見ちゃいけないものをみたような・・・」
「なに言ってるんだよ。ほら、外してやるよ。」

彼は僕のペニスの根元を押さえ、コンドームを外した。僕から離れるとティッシュで包み、ゴミ箱へ捨てる。ティッシュを何枚かとると、僕を机に寄りかからせ、僕のペニスを拭いてくれた。

「達ってないよね?続き・・・しよう?」
「ああ、ベッドでね。」

僕は彼の後を追って寝室へ向かった。パソコンの画面は、二人がキスした画像でビデオは終わっていた。
 
 
 
それから出発するまではとても忙しかった。僕も出来るだけ何か手伝おうとしたけれど、『ネットで全部手配できるから。』と、旅行の手配は全て青山さんがやってくれた。僕のパスポートを取るのが一番面倒だった。それも全部彼が手続きしてくれたのだけれど。

それに、彼は旅行に行くまで毎晩残業が続いた。公休が溜まっているとかで休みを取らなきゃいけなくて、そのために残業するなんておかしな話だ。と思ったけど言わなかった。僕は仕事のことはわからないし、一緒に旅行するためにがんばってくれてるんだから。

そして、今、二人で飛行機に乗っている。飛行機に乗るのも初めてだ。本当にこんな機械が空に浮かぶのか?酸素はなくならないのかな。

「ユウキ?」
「・・・・・」
「ユウキってば!」
「あ・・なに?」
「なにじゃなくて。力抜けよ。ほら、シートに寄りかかれって。」

僕の肩を押してシートにつける。いつの間にか緊張して前のめりになっていたらしい。だって怖いだろ?落ちるかもしれないし。

「しょうがないな・・・・」

彼はブランケットを僕にかけてくれた。彼自身にもかけると、外から見えないようにブランケットの中で彼の手が僕の手を握った。

「手繋いでいてやるから。そんなに緊張するなよ。大丈夫だから。」
「・・・・・うん・・・でも・・・・」
「怖いのか?」
「・・・・・うん・・・実は初めてで・・・・」
「国内線も乗ったことないのか?」
「うん。あまり旅行って行ったことない。」
「そうか。」

ぎゅっと強く手が握られ、僕も少しだけ力が抜ける。

「大丈夫だよ。落ちないし。3時間で着くから。外見てろよ。」
「ありがと。藤本さんたちはもう着いたよね。」
「あいつらは朝の便で出たからな。午後には着いて、今頃ホテルでゆっくりしてるよ。」
「ところで、藤本さんの彼ってどんな人?」
「お前も知ってるだろ?いつも会ってるじゃないか。」

「え?誰?」
「藤本の店の。いつも迎えてもらってるだろ。」
「・・・・えーっ!あの店員さん?」
「店員さんって・・・・まあ、そうだな。」
「そうだったんだ。そうか。あの人って・・・・あっ!動いた。」
「声でかいって。」
「飛行機なのにバックしてる!」
「夜間便だから寝てる人がいるだろ?静かにしないと。(頼むから黙ってくれよ。)」
「あっ前に進んだ!」
「ユウキ!静かに!(ここビジネスだぞ・・・フライトアテンダントも笑ってるじゃないか)」
「見て!見て!青山さん。地面にもライトがたくさんある。暗くてもどの道行くかわかるね。」
「ユウキ・・・・・(泣きたくなってきた・・・)」
「これなら変な方に行ったりしないね。すごいね。キレイだよねぇ。感動だよねぇ。」
「・・・・・・」
「なに?」
「そうだな。キレイだよな。俺も初めて飛行機に乗ったときはすごく感動したよ。」
「そうなの?」
「ユウキ、外見てみろよ。離陸したらすぐ建物が小さくなって、夜景がキレイだぞ。」
「ほんと?」
「でもすぐ見えなくなるから、見逃さないようにしっかり見てろよ。」
「うん!」

僕が小さな窓に顔を寄せじっと外を見ていると、青山さんも顔を寄せてきた。繋いでいた手を解き、僕の肩に手を回し、反対側の手を繋いだ。ちょっと驚いて彼の方を見ると、頬にキスした。こんな明るい中で周りの人に見られてしまう・・・ふと視線を感じた。見ると、スチュワーデスさんが驚いた顔でこちらを見ていた。が、すぐにニッコリ笑うと視線を外してくれた。

 

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